生命保険数学

現価と終価

お金の時間的価値

次のような問いを考えてみよう。

現在の100円と1年後の100円は同じ価値を持つだろうか? 10年後の100円はどうだろうか? 50年後は?

同じ100円は100円だろうとあなたは答えるかもしれない。だが例えば50年というスケールで考えてみると、50年前に100円持っているのと、現在100円持っているのでは、明らかに50年前の方が同じ金額でずっとたくさんのものを買えるはずである。だから、とても同じ価値であるとは言えないだろう。

なぜこのようなことになっているかというと、物価というものは長い目で見るとインフレしていくからである。ゆえに、お金というのは同じ金額であれば、ただ持っているだけでは、時が経つにつれて価値を減損してしまうのだ。

まあ実際には、短期的にデフレする場合もあるだろう。けれど長期的には普通はインフレするものだから、平均的には常に緩やかにインフレしているものと考えよう。すると、最初の問いの答えは、「現在の100円が最も価値が高く、時間が経つにつれて価値が低くなっていく」ということになる。

このように、お金というのはたとえ同じ金額であっても、いつ持っているかで価値が変わってきてしまう。お金は時間的価値を持っているということだ。

そこで、次のような新たな問いが自然と浮かび上がってくる。

それでは、現在の100円と1年後の何円が同じ価値になるのか? あるいは1年後の100円と同じ価値を持つ現在のお金は何円になるのか?

この問いに答えるための概念が、今回のテーマである現価と終価である。

現価と終価は、利率を用いて定義される。

利率に関する注意

利率は i とする。

数学的にはこれで終わりなのであるが、実際には何を想定するかによって用いる利率は当然異なる。

お金の時間的価値において最も自然な設定は、リスクフリーレートを利率として用いることである。リスクフリーレートというのは、投資においてリスクを取らずに(確実に)お金を増やすことのできる利率である。

実務上は国家が破たんしないものと仮定して、国債利回りを用いることが多い。国債を買えば、(国家が破たんしないという仮定の下で)国債利回りにしたがう利益が確実に得られる。だから例えば国債利回りが年率1%とすれば、現在の100円と1年後の101円が(国債を買えば確実に得られるため)同じ価値を持つと考えるのである。

より限られた設定の下では、リスクフリーレートを用いるとは限らない。ある特定のファンドの中でお金の時間的価値を考えたい場合は、そのファンドの年平均リターンを利率として用いるのが適当である。

また、保険商品の場合は、各保険会社が独自の資産運用をしているため、その運用利回りを基準に定めた予定利率としていることが多い。

そういった個別の設定はここでは考えず、単純に利率は i とする。

現価と終価

元金 P を利率 i で時間 t だけ複利で運用すると金額が S になったとする。次の関係が成り立っている。

S = (1+i)^{t} P

このとき、PS の現価であるといい、SP の終価であるという。

利率 i の下では、P を時間 t だけ運用すれば S になり、逆に時刻 tS になっているためには、はじめに P をもって運用すればよい。

そこで、利率 i の下では、PS は同じ価値を持つと考えるのである。同じ価値を持つことを等価であるという。

このように、ベースの利率による運用で互いに結ばれる関係ならば同じ価値を持つと考えるのが、お金の時間的価値の基本的な考え方である。

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